いっぴきこあらの大冒険

ロードバイクで鄙びた集落を巡るブログ

【千葉県】ねじ式で描かれた漁村・太海を巡る

太海

つげ義春の名作・ねじ式で主人公がさまよった漁村のモデルである太海に向かった。

 

ねじ式の解説や、ロケ地周りについては他の方のブログに書かれているのでぜひ。

hina-ken.com

 

ねじ式は大学の授業で扱われていたのがきっかけで知った。フロイトの精神学と絡めてこの作品を解説していたが、つげ義春本人は否定しているらしい。

 

booklive.jp

ねじ式は1968年(昭和43年)の作品で、当時の漁村の様子が描写されている。主人公が海水浴中にメメクラゲに刺され、大怪我を負う。医者を探し回るが漁村の人に相手にされない。漁村から不思議な汽車に乗り隣の村へ向かおうとするも、汽車は元の漁村に戻ってしまう。そこで再び医者を探すが、出会ったのは母親だった。その後、産婦人科の女医に出会い、「シリツ」をされる。。。

 

ねじ式のようなシュールさも好きだが、つげ義春の漫画は当時の暮らしが垣間見えておもしろい。特に旅行記では、自分と同じように「鄙びた」旅館を目当てにしていたりと親近感を覚える(そこでぞんざいな扱いを受けて沈み込むのもかわいい)。

 

そんなつげ義春が好みの鄙びた漁村として推していたのが太海だ。

 

太海安房鴨川の西側にある。今日はGWで、鴨川シーワールドの駐車場へはひっきりなしに車が入っていた。その周辺にはバブル期に建てられたのであろうリゾートホテルが並ぶ。安房鴨川から海沿いの細い道を進んだ先に太海はある。

 

磯釣りと仁左衛門島と呼ばれる近くの島が多くの人が太海に訪れる理由となっているのであろう。周囲には寂れたリゾートホテルや定食屋の空き家が並んでいるが、さらに海側に進むと、昔ながらの漁村の風景が残っている。

太海の漁村に入る。

 

漁村の全景。右側に見える島が観光名所・仁右衛門島で千葉唯一の有人島だ。

民家が密集してるエリアに向かう。

駐車場があり、ここからは徒歩で階段を上り個人の家に向かうようだ。


民家の間の道は、ウォーキングコースになっている。このウォーキングコースは、他人の家としか思えないような道に設定されており、初見では絶対に訪れることができなかったであろう道を歩くことができた。

ウォーキングコースに設定されている道。初見なら歩くのは難しいだろう。

階段を登った先から見下ろす海が良い。

ねじ式で主人公を乗せた機関車が到着する場所。看板が置かれている。つげ義「春」の春を誤字ったらしく、シールが貼られていた。

ねじ式で主人公が乗った機関車が到着した場所。ウォーキングコースが設定されている。

海側の道も車一台通るのも難しいような道が続く。ここを通った先が海水浴場だ。「メメクラゲ」に刺された主人公とは逆向きだが、主人公も通ったであろう道を歩くことができた。

庭の洗濯物干し場や海沿いの曲がった道に並んでいる民家など、漫画で描写されている景色を感じることができた。

温泉旅館もあり、料理をいただくこともできるらしい。

メインストリートと言えど、車一台通ることもできない。

海沿いの道に沿って海水浴場に向かう。

太海の海水浴場。向かいに鴨川の街が見える。

四国や山陰の漁村は、漁村として生まれ、変わることを考えたことすらないような顔で、昔の姿をとどめていることが多い。

一方、太海は東京から近いこともあり、アクセスの良さからリゾートホテルや観光旅館に囲まれている。海岸からは、鴨川シーワールドもあり背の高いホテルの立ち並ぶ鴨川が見える。太海からは、もしかしたら自分も変われたのかもしれない、しかし変わることができなかった街の雰囲気を感じる。

 

千葉県はアクセスの良さからバブル期に娯楽施設が多く建てられた。その中には建設が途中で頓挫し、廃墟として有名になっている建物もある(君津エースゴルフクラブ跡の橋など大好物だ)。

 

太海から帰る途中、鴨川の街を通ったが、思っていた以上の寂れていた。鴨川シーワールドのあるエリアは人が多いが、他の海沿いの街には昔建てられたであろう商店がそのまま放置されている。

 

今回は車を止めるのが難しかったため、歩くことを諦めたが、今度機会があったら訪問してみたい。

 

大多喜

太海からの帰り道、途中で大多喜によることにした。大多喜城があり、城下町の街並みが残っている。いすみ鉄道も通っており、訪れる人は多い。観光地化されており、ガイドマップも充実している。

大多喜の街並み。

街を代表する大屋旅館。

最後に和菓子屋さんで最中を買って帰った。

新緑がきれいだった。